今日は「や」の気分

自分が触れて感じたことを伝えるブログです

大傑作『若おかみは小学生!』(感想・レビュー)

◆公式サイト

https://www.waka-okami.jp/movie/

 

はじめに

本当に面白い作品だったので、多くの人に見てほしいと思い、ブログに書いてみます。

関係者でもない自分にとってできることは、面白さが伝わるように

なるべく興味を引けるように情報を発信するしかないので。

どういう人にオススメ?

細田守の『時をかける少女』が好きな人は見たほうがいいと思います。

ジブリ作品が好きな人は見たほうがいいんじゃないでしょうか。

とくに『千と千尋の神隠し』が好きな人は見るといいかもしれません。

この世界の片隅に』が好きな人は見ないと損。

作画好きも、背景好きも、脚本好きも、演出好きも見るべきと言えます。

そうそう、結局ポスト宮崎駿が誰なのか気になっている人は見ておいたら幸せになれますね。

 

ありがとうヒョーゴノスケさん

◆ヒョーゴノスケさんのTwitter

https://twitter.com/hyogonosuke

ごぞんじ『ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』のポスターを手がけたイラストレーター。

ノスタルジックな絵を書かせたら、向かうところ敵なし(と個人的に思っています)

Twitterで何度も本作の良さを伝えていたヒョーゴノスケさんには感謝してもしたりません。

まさしく、映画館で見るべき傑作でした。

 

時をかける少女』の  「とまれとまれとまれ…」ここで涙腺が決壊した方は、

本作で何度も涙腺が決壊ナイアガラ大瀑布。

実際、映画館にはすすり泣く声が響き、スタッフロールが終わったあとも、

大の大人がしばらくは目元を抑え、立ち上がることができない光景を目の当たりにしました。

何度も言うけど、大傑作なので、今見ておかないと後悔すると思います。

ホントの傑作は、内に秘めることができず、周囲に言いたくなるものです。

 

どうして面白いのか

物語の始まりには「衝撃」があります。

そもそも「衝撃」から物語が始まると言えます。

たとえば、男子高校生と女子高校生が入れ替わったり。

たとえば、海で水蒸気爆発が起きてアクアラインのトンネルが崩れたり。

 

物語の「衝撃」は2種類あります。

1つは「登場人物が受ける衝撃」です。

これは物語展開上は衝撃的ですが、観客が衝撃を受けるとは限らない。

主人公がクラス1の美少女に突如告白されたとして、それだけでは読者は衝撃を受けない。

 

もう1つの衝撃とは「観客が受ける衝撃」です。

物語の第三話で、頼りにしていた先輩がマミ……つまりそういうこと。

こちらの衝撃のほうが、よりお客の感情を揺さぶる。

 

先に『魔法少女まどか☆マギカ』を例に出してしまったけれど、

登場人物と観客の衝撃がシンクロした時、物語は最大限のパワーを発揮して、目が離せなくなる。

 

若おかみは小学生!』は見事なまでに衝撃を与え、登場人物と観客との気持ちをシンクロさせた。

それが、本作を傑作と断じる理由です。

 

抽象的に評価してみる

本作は観客の感情をバラバラにしたあと、優しく癒やしていきます。

 

この破壊と再生をこなした作品は『この世界の片隅に』か、

あるいは『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』ぐらいのものです。(さすがに言い過ぎか)

 

作中には、感情が噴き上がる「衝撃」があります。

主人公の「おっこ」にとって、その衝撃は、予期せぬ形で訪れます。

ショックを受けた観客は、むしろ主人公によって癒やされていきます。

ですが、ショックは着実に主人公を蝕んで、幸せな悪夢としてつきまといます。

 

観客は、主人公であるおっこを見守る幽霊となって、ともに涙し、応援することになります。

おっこは宿を訪れた客を癒やすために奮闘し、その様子は観客を勇気づけ、癒やしていきます。

けれど、おっこ自身を、根本から癒やすすべを、傍観者である観客は持ちません。

過酷な現実に翻弄され始めるおっこを、ただ見守ることしかできないのです。

 

物語は登場人物への感情移入が激しいほど、出来事に対して感情を揺さぶられます。

若おかみは小学生!』は、物語の始まりから、感情を鷲掴みにされ、

そこから逃れることができないまま、クライマックスを迎えます。

 

クライマックスのシーンで、観客の胸にあるのは、おっこが可哀想という憐憫ではなく、

おっこ頑張れ、泣かないでという応援する気持ち。

おっこはそれに応えてくれます。

立ち上がり、笑顔を見せる。

 

映画が終わる時、観客は我が子が独り立ちしたような寂しさとともに、安堵した気持ちを得るでしょう。

 

見ない理由はありますか?

見るべき理由は最初に述べました。

ひとつでも条件に当てはまる人は、映画館にGOです。

それでも見る気が起こらないのなら…

 

絵柄が気になる?

大丈夫、あなたも子供の頃は児童文学や子供向けの漫画を見ていましたね。

大人になった今となっては、子供っぽいと感じるかもしれませんが、

昔の気持ちを思い出して、子供の頃に戻った気持ちで、この絵柄を楽しんでみては?

 

児童向け原作を見るのは気が引ける?

大丈夫、あなたが見ているディズニー諸作品はもとはといえば児童向けです。

美女と野獣』はいつ見ても楽しめるし、『シンデレラ』の物語は記憶に残り続けるし、

男の子はほら『泣いた青鬼』が大好きなままに違いありません。

自分の中の純粋な心を封じ込める必要はありません。

本作を見たいと思ったなら、映画館にGOです。

 

キャラクターの目が大きいですか?

大丈夫、ピクサーやドリームワークスの映画だって、キャラクターの目は大きいですよね。

アナと雪の女王』を見たことはありますか?

本作にひけをとらない目の大きさです。

 

監督が無名?

いえいえ、無名どころか超有名です。

あなたが目にしてきた宮崎駿監督作品で、

なんども作画監督をつとめてきた男です。

あの宮崎駿の下で、叩き上げられた男です。信頼するしかない。

監督「高坂希太郎」とは

監督の経歴にも触れてみましょう。

 

火垂るの墓』の原画を担当した。

つまり、高畑勲から何かを学んでいる。

風の谷のナウシカ』の原画を担当した。

つまり、宮崎駿から何かを学んでいる。

というより、作画監督をつとめてきたのだから、弟子ともいえる。

天使のたまご』の原画を担当した。

つまり、押井守から何かを学んでいる。

王立宇宙軍オネアミスの翼の原画を担当した。

つまり、庵野秀明から何かを学んでいる。

AKIRA』の原画を担当した。

つまり、大友克洋から何かを学んでいる。

メトロポリス』の原画を担当した。

つまり、りんたろうから何かを学んでいる。

思い出のマーニー』の原画を担当した。

つまり、米林宏昌から何かを学んでいる。

『バケモノの子』の原画を担当した。

つまり、細田守から何かを学んでいる。

才能がある人だから、才能がある人々から頼りにされている。

列挙した作品群を見たことがあるなら、その血脈をたどるつもりで、

本作を見るのはどうでしょうか。

 

監督のイメージボードを見れば、文句なしにジブリ濃度が高いことは理解できるはず。

ジブリが好きなら、やっぱり見に行ったほうがいいです。

https://natalie.mu/eiga/news/303904

 

さらに監督はテレビアニメ版の『YAWARA!』『MASTERキートン』『MONSTER』に

根深く関わっています。

浦沢直樹の作品が好きなら、監督の作品を見に行ってみてはどうでしょうか。

 

脚本家「吉田玲子」とは

本作の脚本を担当している業界の大ベテランです。

 

◆TVアニメの脚本担当

おジャ魔女どれみ

デジモンアドベンチャー

カスミン

カレイドスター

かいけつゾロリ

マリア様がみてる

シュガシュガルーン

けいおん!

獣の奏者エリン

ガールズ&パンツァー

弱虫ペダル

SHIROBAKO

ヴァイオレット・エヴァーガーデン

 

劇場アニメの脚本担当

デジモンアドベンチャー 僕らのウォーゲーム』

『夜明け告げるルーの歌』

聲の形

 

ほら、見たことのある作品、好きな作品があるはず。

それでは本作を見に映画館へGOですね。

 

結びに

本作は、今年度のシン・ゴジラ、あるいは「この世界の片隅に」と言えます。

これらの作品に共振したのなら、本作を見てみてはどうでしょうか。

 

映画作りには時間がかかります。

本作と同程度のクオリティの作品はすぐには登場しないでしょう。

細田守は迷走中で、新海誠は休息中、庵野秀明は……はやくウルトラマンを作ってください。

トリガーのグリッドマンに持っていかれますよ?

そうだ、グリッドマンが好きなら、本作を見に行ってみてはどうでしょうか。

さすがに関係ないですね。

 

とにかく、劇場作品としてこのクオリティの作品は、今後すぐには登場しないと思われます。

今見に行かなくて、いつ見に行くのか。

早く見に行って、そして高坂監督にもっと作品を作ってもらわないと。