今日は「や」の気分

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【感想】『9時間9人9の扉』

■ゲームについて

簡単に。
過去にDSで発売されたタイトルのsteam移植版。

閉鎖空間に集められた男女9人が、9時間後に訪れる死を回避するために、時に助け合い時に争いながら、脱出を目指す。

ディレクターとシナリオは打越鋼太郎
今作から始まる『極限脱出シリーズ』の他、
名作と名高い『Ever17』を描ける。
最新作『AIソムニウムファイル』を開発中。

■おおまかな感想
プレイしている最中はとても楽しめる。
マルチエンディングだが、いずれのエンディングでも無理やりな展開という感じが否めず、首をかしげる
過程は良いが、結末はよろしくないゲーム。

ただ、ゲームは遊び終わった後だけでなく、遊んでいる最中の楽しさも重要。
このゲームは遊んでいる最中の楽しさはすこぶる好調なので、良いゲームだと思う。

買って遊んで損はない。

■脱出ゲーム
まさに脱出ゲームの遊びが多く盛り込まれている。
ポイントアンドクリックで様々なオブジェクトを調べ、ヒントを得て、小部屋からの脱出を目指す。

脱出ゲーム→シナリオ→脱出ゲーム…
を繰り返し、シナリオの終点を目指す。

合間に挟まる選択肢の結果に応じて、その後の展開が変化する。
フローチャートがいつでも閲覧でき、過去の時間に跳ぶこともできるため、分岐を追いかけるのは容易。

最近なら『レイジングループ』を想像してもらえばいい。
プレイしていないが、構造は『ひぐらしのなく頃に』が近いと思われる。

脱出ゲームのクオリティを問えるほどプレイ経験がないが、総じて難易度は低い。
不快なほど簡単でもなく、ちょっとした計算やメモを行う必要があるので、脱出ゲームの醍醐味である「自分で考えて解く」楽しさは担保されている。
少し『数字根』と『16進数』のネタが多すぎるかもしれない。

■オカルトとSF
作中には30分に1度は面白雑学が挿入される。
各キャラクターが神妙な顔でオカルト知識を披露し、必ず「ま、冗談だけど」という体裁で終わるのは苦笑するが、どのネタも面白い。

「へえ、そうなんだ」
「たしかに、そうかも」
「マジか」

という驚きが30分ごとに訪れるのは心地よい。
なおかつ、この雑学が全てトゥルーエンドにつながっていて、無意味なものがない。
というより、先にエンディングを決め、それらに関するネタをかき集め、シナリオ全体に散らばらせたのだろう。
だから、突然キャラクターが雑学を披露し始めることになっているのだと思う。

繰り返すがやや唐突な挿入ではあるものの、ネタは大変面白いため、なんら不快感はない。

■ボイスと演技
本ゲームの一番の特徴はボイス、あるいは演技だ。
ゲームは人並み以上に遊んできたが、こういったボイスは珍しい。

まず、演者の音量が小さい。
ささやき、独白…ユーザーに聴かせることよりも、キャラクターの演出を重要視している。
そのため、画面のチープさ(元がDSなのでどうしても)の割に演技が生っぽく感じる。
デスゲームものは、つまるところサバイバルであり「生きるか死ぬか」を描く。
そこで演技が生っぽい=キャラクターの存在感が濃い事は、非常に臨場感を底上げする。

次に、演者が早口である。
ゲームテキストはほとんどが「重要な情報」なので、必読させるように意識されて書かれている。
ただ、見た目にテキスト本文が表示されているのだから、ボイスまで「聞こえやすい」「はっきりしたもの」にする必要はない。
先程の「声が小さい」と同様に、早口な様子はキャラクターの生っぽさを強化する。
そうでなくてもサバイバル、自然早口になったり、思考を整理するために独り言を呟くこともあるだろう。
独り言は対話ではないため、早口になるのも納得できる。

これらの演出により、ライブ感がある。
近いのはラジオドラマかもしれない。
意図的な音響監督による演出だと思われる。

■ギャルゲーらしさ
ところどころテキスト、キャラクターとのやり取りに顔を出すギャルゲーらしさ。
不要だったと思う。
おそらく、ライターの癖…ではなく、ユーザーへの不安、不信感だろう。
媚を売らなければならないという強迫観念。
本作がある程度受け入れられたので、次作以降では減っていくのではないかと思われる。

■ラスト
最後の展開、最後のエンディング。
衝撃ではある…が、さすがに展開が早すぎてついていけない。
さらに放りっぱなしの設定も多い。
過程が面白いゲームなので許容できるが、さすがにヒドい。

大逆転裁判をリアルタイムに買った人の気持ちを理解した。
続編につながるとしても、作品内で謎は完結させるべきだ。

イシイジロウらの4gamerインタビューを見るに、
社内でもメジャーな開発チームではなかったらしいので、とりあえずの完成を優先したのだと思う。

■総論
遊ぶ価値のあるゲーム。
雑学だけでも価値観を変化させるパワーがあるので、価値がある。
シナリオ自体も他にはないトリックで面白い。
人に勧める際は「過程も加点」という姿勢を持てる人かどうか。

粗いが、記憶に残るゲーム。