【感想】『スター☆トゥインクルプリキュア 第16話 目指せ優勝☆まどかの一矢』
◆全体
プリキュア作品は何本かしか見ていない。
前回の『HUGっと!プリキュア』も今回の『スター☆トゥインクルプリキュア』もいまいち楽しめなかった。
むしろ苛立ちが勝っていた。
女児向け子供向けと言っても、このクオリティはなんだ?
どうでもいい動機付けで戦う少女たち。
感情的な導線を引かず、テレビの都合で怒り泣き戦う。
大人の都合しか感じないストーリー。
キュアマシェリとキュアアムールの覚醒回はとても良かったけれど。
ところが『スター』の16話は良かった。楽しめた。
なるほど、作品うんぬんではなく、自分の趣味思考が偏っているのかもしれない。
じゃあ、それはなんだろう。
◆『スマイルプリキュア!』
いくつかプリキュアを見て、一番楽しめたのがこの『スマイル』だ。
キャラデザも良かったが、まず引き込まれたのがオープニングだ。
不思議な光に包まれるピンク髪の主人公と、その背後に立つ変身した姿。
背を預け合う二人の表情に注目してほしい。
主人公は驚いた顔をし、変身した姿=プリキュアとなった主人公は自信に満ち溢れた笑みを浮かべている。
そう、この作品は「不思議な力を手に入れた少女たちの物語」なのだ。
ただ「変身して悪をやっつける」だけではない、そこには戦いの前に、ドキドキとワクワクが待っている。
『スマイル』はこのオープニングをコンセプトとして、物語が展開している。
いや、おそらく一貫したコンセプトがあったのだ。
「ドキドキとワクワク、それからちょっと笑えるプリキュア」という。
であれば、このコンセプトはどうやったら達成できるのか。
戦えばいいのか?
ドキドキするか?
するかもしれない。
ワクワクするか?
戦闘狂なら。
笑えるか?
無理かな。
じゃあ、どうする。
戦いに重きを置くのはやめよう。
日常を描こう。
そこにお約束の戦いを。
ただし、その戦いは日常の延長に。
何かを乗り越えるための手段にしよう。
『スマイル』はいつだってドタバタと物語の幕を開け、
そして次第に思い悩む人々が現れる。
そこにつけこむ悪党たち。
悪党は単なる厄介で迷惑な存在ではなく、
彼女たちが日常の問題を再確認し、乗り越えるための手段なのだ。
(いつもそうとは限らないけど)
この日常と戦いが溶け込んでいる感覚。
これこそが自分の求める物語、ということだろう。
『HUGっと』も日常は手厚かった。むしろ仕事や教育といった、大人との絡みが多かった分、『スマイル』よりも濃かったと言える。
だが、何か息苦しかった。
キャラが脚本家によって動かされている感覚。
言いたいことを言えず、言うべきことを言わされている感覚。
おそらく、敵が強大過ぎたのかもしれない。
敵の動機が強すぎた、社会性を帯びすぎていたのかもしれない。
中学生の少女たちが立ち向かうには、あまりに経験の差がある。
人生のなんたるかを知らない、だからこそ向こう見ずで純粋な力で悪に堕ちた大人たちを看破していく。
そこに爽快感があれば良かった。
『大人帝国』のしんちゃんは「ずるいぞ!」と叫んだ。
ここにはほろ苦い快感があった。
『HUGっと』にはそれがなかった。
『スマイル』はドタバタし、少女らしい悩みを抱えていれば良かった。
『HUGっと』は重たすぎる荷物(主題)を持て余していたように思う。
戦いは日常の延長に。
はっはっは。
『スター』は戦いと日常が溶け込んでいない。
「フワをモノみたいに言うな」
それが変身の理由?
そんな小さな理由を与えるくらいなら、強制的に変身させて戸惑わせたほうがいい。
心の力を描くなら、ちゃんとキャラを描かなければいけない。
変身は祝福であると同時に呪いでもある。
可能性と冒険の喜びと、
使命と戦いの苦しみと。
まあ、プリキュアにそれを求めているわけではないが、
無意味な戦闘は興ざめだ。
◆16話
だが、この16話は違った。
楽しめた。
結論は出ている。
日常に溶け込んだ戦闘だったのだ。
それだけではない、
日常にドキドキとワクワクがあった。
笑いは…あまりなかったけど。
物語の構成が日常に重きを置いた回だった。
ベースは弓道の試合の行方。
自分だけを信じるライバル。
悩みながらも、他の人々の思いを力に変えるヒロイン。
試合での接戦、均衡が崩れ、思いの力が勝利を呼ぶ。
戦闘は試合の行方を左右しない。
ただ、ほんの少しライバルの気持ちを教えてくれた。
本来なら知り得なかったライバルの気持ち。
もしかしたら気が付かなかった自分の気持ち。
それが戦闘によってもたらされた。
こういうシナリオが好みだ。
シナリオを書いたのは平見瞠さん。
『おじゃる丸』をライフワークに『アイカツ』も担当している。
日常描写に強い人なのだろう。