今日は「や」の気分

自分が触れて感じたことを伝えるブログです

【感想】映画『スター☆ティンクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』

「きらやば…」だった。
「キラやば〜!」
ではない。


前回の映画『ミラクルユニバース』はお金返して、という出来だったのに対し、今回は汚名返上、名誉挽回、逆転サヨナラ満塁ホームランだった。


アニメを鑑賞する際は「絵(作画・レイアウト)」「演出」「脚本」「音」で楽しむものだが、その全てが丁寧に作られていた。


特に作画は「キャラデザがそのまま動く!」というコンセプトなのかどうかは知らないけれど、一番丁寧に描かれた絵がそのまま動くという感じで、見ていて眼福、お金を払う価値のある内容だった。


冒頭が宇宙空間で、その後の舞台が沖縄ということもあるけれど、影を濃い目に乗せ、さらに丁寧に盛り付けることで、劇場版らしいリッチさと、キャラクターの立体感を生み出していた。


ギャグシーンではきちんとテンポを切り替えられていて、適当に入れる「子どもだまし」ではない。無理やり笑わせようとすると「情報」だけが伝わり、一番重要な「間」が損なわれる。今作はギャグシーンの意図を明確に持ち、演出も間を意識し、視聴者と一体感を得られるようになっていた。


スタプリ(長いので略します)のモチーフは「宇宙」だが、その裏には「歌とダンス」がある。テレビ本編では味付け程度で「なぜ歌うのか、なぜ踊るのか」は説明されない。
だが、今作では「明確な意味」がある。
歌わなければならないし、仲間と歌うからこそ気持ちが自然と盛り上がり踊りだす。
「誰かのために歌い、踊る」これが脚本に書かれ、演出が応えている。


テレビで流れる映画のCMと映画ダンスの切り取りは、狙いが外れていて失敗していると思うが、逆に成功につながっている。
CMを見た人は「世界中を旅するとか…散々宇宙を旅しておいてショボい」と思いそうだし、ネイチャー系の映像はどうしても教育的な側面があって、自然と身構えてしまう。真面目ぶりやがって…ウザ。という感じ。
切り取りダンスを見た人は「なーんだ、いつものCGね」と思うだろう。背景も「ただの海じゃん」で印象に残りづらい。
だが、この失敗が劇場で効いてくる。
目が覚める、と感じる。
同じ気持ちは映画「若おかみは小学生!」の冒頭に流れる神楽のシーンで味わった。
「地味」
「真面目」
「退屈」
という感情。
だが、今はあのシーンに涙せずにはいられない。
あの時間こそがもっとも尊い…いや、ここから先は本編を見てほしい。


話を戻そう。
スタプリの映画CMと切り取りダンスは、客引きとしては失敗、マイナス効果になっていると思う。
だが、劇場で見ると、あのシーンの意味を知り、全くもって無駄ではないことが分かる。
だから、CMとダンスを見て「見なくてもいいかな…」と判断した人こそが見に行ってほしい。


前言を覆すようで申し訳ないが、今回は作画が華麗だった。
特に華麗なのが「切り取りダンスにつながる直前のシーン」だ。
「歌い踊る」瞬間を最大限に「演出」するにはどうするか?
現代で「華やかに歌い踊る」のは誰か?
それは「アイドル」だ。
そして、極めつけは「ミュージックビデオ」だ。
プリキュアたちの想いが溢れ、それを華麗に演出した「切り取りダンス」につながるシーンは、演出者の「意図のために多少の細かいことは捨て去る」覚悟を感じた。
時には整合性よりも大事なことがある。
子ども向けの映画なら、なおさらだ。
すみません、今回はCGより作画のほうがキレイでした。


今作は敵が怖い。
純粋な悪党で、犯罪者だからだ。
登場シーンからして「ドラゴンボールか!」とツッコミたくなる凶悪感。
実際に戦闘が始まってからも「これ…クウラ(劇場版で登場したフリーザの兄)だわ」と言いたくなるくらい、シリアスなバトルが続く。
ちょっと子どもには怖すぎた気がしないでもないが、それに立ち向かうプリキュアたちの凄さ、勇気を描くのには役立っていた。
うーむ、それでもバーン星人は怖すぎる。


さて、色々と書き殴ったが、今作でもっとも褒め称えるシーン、というか言葉がある。
それが
「きらやば…」
だ。


「キラやば〜!」
ではない。


思わず漏れ出た真実の「きらやば…」。
キラ、ではない。
やば〜でもない。


ため息のように、ささやくように、自然と内から湧き出た「きらやば…」。
この狙いすました最高の演出と、それを演じきった声優に拍手を送りたい。


…。


あと、あれだ。
ユーマの「あの」姿。
脚本家は最高の仕事をした。
内容は全く異なるがドラえもんの「鉄人兵団」のラストシーンを思い出した。
とてもSFらしく、ファンタジックでエモーショナルなアイデアだった。
スタプリは宇宙が舞台。
つまりSFなのだから。