2019/12/06:雑記
『星合の空』について思うこと(1)
好みの作品だけど、色々と思うところはある。演出と作画に対して、脚本というか「台詞」が少しくどい気がする。語りすぎと言ってもいい。
この作品では問題のある親(なぜか母親だらけ…マキの父親を際立たせるためか)が多く登場する。その台詞が妙に直接的ななじりで、ステレオタイプに感じられる。
たとえば8話、モンペと友人から言われるある登場人物の母親。彼女は息子を大事に思うあまり(もちろん、大事にしている「つもり」だが)部活動について問題視し、クレームを学校に入れて部活動を妨げてしまう。
その際のやりとりがこうだ。
「日曜日に部活の集まり? 何をするのよ?」
「聞いてない! だいたいバーベキューなんて、部活動と関係ないでしょ。そんないい加減な集まり」
「ロクな子たちじゃないでしょ? ソフトテニス部の子たちなんて」
「それに、お酒も飲めないくせにバーベキューなんて、楽しいわけないでしょ」
「だいたいね、今の時期からちゃんと勉強しないと高校受験のとき大変なのよ?」
「もう2年なの!」
「ソフトテニスなんてやっててもいいことなんてないし、時間の無駄。さっさとやめて」
「一度だけ、練習試合を観に行ったけどね。顧問の先生もいい加減だし、部活の子たちもヘラヘラしちゃって試合もすぐに負けて。アンタなんか全然活躍できなくて。わたし恥ずかしいったらなかった。」
「じゃあ次は? 勝てるの? バーベキューなんてのんきなことやって」
「言うことを聞きなさい!」
「アンタが心配だから言ってるのよ?」
「わたしはアンタの親なんだから!」
子どもの自主性を軽んじて、自身が望む姿にコントロールしようとする親の姿が描かれている。同時に、息子が所属しているコミュニティに対して難癖をつけることで、そこからの離脱を狙っている。
それを描くために、ここまでの台詞量は必要だっただろうか?
畳み掛けるように難癖をつけてくる親に対して、不満が爆発するという意図があった。だから、母親は饒舌に語る必要がある。とすると、台詞が多いこと自体は問題ないのかもしれない。ぽつりぽつりと反論して、最後に爆発するのも悪くはない。
ふむ…台詞量に違和感があるわけじゃないのか。
母親の言動が支離滅裂だからか?
親が自分の価値観を息子に押し付け、息子がそれに抗う。
価値観を押し付ける=部活批判、コミュニティ批判、顧問批判、才能否定、自主性否定
ああ、そうか。
バーベキューのくだりの「お酒も飲めないのに楽しいわけない」部分が不自然に感じられるのかも。理不尽なことを言う、という意図なのかもしれないが共感しづらい台詞だった。ステレオタイプな母親像を描くために、わりとそれっぽい台詞を選択しているにも関わらず、この台詞だけ妙に個性的だ。
「バーベキューなんて、飲み会に誘う上司と同じ、短絡的なのよ」
みたいな台詞だと共感できたかもしれない。
『星合の空』について思うこと(2)
マキがユウタと会話するシーン。ここでのやりとりが「監督の考えをキャラに言わせてる」という感想を目にした。自分はそこまで気にならなかったが、確かにメッセージ性の強い、やや露骨とも感じられるシーンだった。
では、どういう脚本だったら「うまい」と思われるんだろう?
自身の性意識に思い悩むユウタに対して、知り合いとの付き合いを交えて寛容な態度を示すマキ。
・自分の身近に性について悩みを抱えた人がいた
・自分は、その人を好意的に思っている
・他人にはなれないので完全に悩みを理解することはできないが、想像することはできる
・ユウタの悩みについても間違っているとは思はない
これを台詞ではなく「行動」で示せばよかったのか?
あるいは、もっと自然な台詞だったらよかったのか?
志村貴子なら「ニトリくん、かわいい! すっごくかわいい!」の一言で色々な問題をすっとばすんだろうな。
あるいは「へ? 似合ってるけど?」「似合ってますか…」「うん、あたしより可愛いくらい」みたいなやりとりで「自分がやりたいことをやって、しかもそれがふさわしいならなんの問題があるのか」と感じさせる気がする。(ニトリくんとアンナちゃんの会話なら)
千葉さんなら「問題ない! だって、すごく似合うんだもの…(口元を抑えて赤面)」って感じだろうか。
ニトリ「千葉さんは、思ったことをはっきり言うね」
千葉「ごめんなさい…でも! 本当だもの!」
ニトリ「…ありがとうございます」
千葉「ううん! 私の方こそ嬉しい! 私…今日のことを一生忘れないわ…」
とか言いそう(長い妄想だなー)
人の悩みに共感し、理解を示すってのはどういう行動で表現できるのだろう。
『鬼滅の刃:1話』について
妹を背負って丸太を飛び越えるシーンのアニメーションがすごすぎる。
うつのみやさとるを思わせる立体感のある動き。
肉体の重さ、妹の重さ、疲れ、急いでいる様子、雪の深さ…すべてが統合されたアニメーション。
CGかもしれない…。
でも、あのシーンだけCGにするなんてことあるか?
カメラが遠いから、キャラが小さいときはCGにする、という方針かもしれん。
すごすぎる…美しい。
『鬼滅の刃:2話』について
落とし穴から這い上がるシーンのアニメーションがすごすぎる。
これもカメラが「丸太を飛び越える」シーンと同じくらいの距離。
CGなんだろうか…うますぎる。
『鋼の錬金術師』アニメ版(オリジナル脚本が多いほう)の吉成鋼パートを思わせる細かい枚数で立体的な空間移動。
戦闘シーンのアニメもすごいんだけど、こういう細かい部分のほうが燃える。